もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
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「ただいま」
乱暴に袖で涙をぬぐって鼻を啜りながら、店の引き戸を開けると、最悪なことに兄が来ていた。
「お、優紀。季節外れのハロウィーンか、そんな恰好して……え、お前、泣いてるのか」
「なんでもない」
すぐ降りてくるから、とレジ前にいた祖母に声をかけて、奥に入ろうとすると、ぐっと腕を掴まれた。
「ばあちゃんが言ってたが、お前、玲伊のところに行ってたんだよな。あいつに何かされたのか」
「そんなはずないでしょう! なんにもないよ」
「じゃあ、どうして泣いて帰ってきたんだ」
「ごめん。割れそうに頭痛いから、話は後にして」
そう言って、二階に上がろうとしたところ、また最悪なタイミングで玲伊さんが店に入ってきた。
兄はつかつかと玲伊さんに歩みより、彼の胸倉をつかんだ。
「前に言ったよな。優紀を泣かせるようなことをしたら容赦しないって」