もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

***

「ただいま」
 乱暴に袖で涙をぬぐって鼻を啜りながら、店の引き戸を開けると、最悪なことに兄が来ていた。

「お、優紀。季節外れのハロウィーンか、そんな恰好して……え、お前、泣いてるのか」
「なんでもない」
 すぐ降りてくるから、とレジ前にいた祖母に声をかけて、奥に入ろうとすると、ぐっと腕を掴まれた。

「ばあちゃんが言ってたが、お前、玲伊のところに行ってたんだよな。あいつに何かされたのか」

「そんなはずないでしょう! なんにもないよ」

「じゃあ、どうして泣いて帰ってきたんだ」

「ごめん。割れそうに頭痛いから、話は後にして」

 そう言って、二階に上がろうとしたところ、また最悪なタイミングで玲伊さんが店に入ってきた。

 兄はつかつかと玲伊さんに歩みより、彼の胸倉をつかんだ。

「前に言ったよな。優紀を泣かせるようなことをしたら容赦しないって」

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