もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
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部屋に入ると、力が抜けて、その場に座りこんだ。
頭痛はまったく収まらない。
酔いざましの水を飲んだほうがいいんだろうとは思ったけれど、それすら億劫だった。
しばらくそのままでいると、階段を上がる足音が聞こえ、ふすまの向こうから兄が話しかけてきた。
「玲伊は帰ったぞ」
「そう」
わたしはのろのろ立ち上がり、ふすまを開けて兄に言った。
「お兄ちゃん、おばあちゃんに頭が痛いから今日は休ませてって言ってきてくれる?」
「ああ、わかった」
それから洗面所で頭痛薬を飲み、借りたワンピースを脱いでハンガーにかけ、部屋着に着替えてベッドに倒れこんだ。
仰向けになって、指で唇に触れた。
まだ、玲伊さんのキスの感触が残っている。
でも、大好きな人とのはじめてのキスがこんなに苦いなんて。
そんなこと、想像したこともなかった。
そう思うと、また涙がこみあげてくる。
そのまま、暗くなるまでベッドで横になっていた。
店を閉めた祖母が、部屋に入ってきて明かりをつけた。
まぶしくて、わたしはぎゅっと目を閉じた。