もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
玲伊サイド:彼女にキスした理由
屋上で取り込み中にかかってきた電話は、紀田さんからだった。
後でかける、と断るつもりで応答した。
「はい、香坂です」
だが彼女は開口一番『すみません』と大きな声で謝ってきた。
あまりにも深刻な口調だったので、つい「えっ、どうしたんです?」と聞いてしまった。
案の定、優紀はその隙に出ていってしまった。
だが、すぐに切ることができないほど、紀田さんの話は聞き捨てならないものだった。
『実は……大変申し上げにくいのですが、加藤さんにモデルを降りていただくことになってしまいそうで』
「……どういうこと?」
『電話では説明が難しいので、もしお時間がございましたら、これからお伺いしたいのですが』
「わかりました。今日は休みなので、裏から回ってください。その旨、警備の者に伝えておきます」
『了解です。急なことで、本当に申し訳ございません。1時間ほどで伺えると思いますので』