もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

 電話を切った後、警備員と笹岡に連絡を済ませて、ひと段落つくと、俺はソファーに座りこみ、しばらく頭を抱えていた。

 なんて馬鹿なことをしてしまったんだ。
 無理やり、キスするなんて。

 自分で自分が信じられない。

 シンデレラ・プロジェクトが始まってひと月経ち、固く結んだつぼみが陽の光を浴びて、ゆっくりほどけていくように、優紀はようやく変わりはじめたところだったのに。

 青白く沈んでいた肌の色は明るさを取り戻し、目にも光が宿るようになった。

 担当の岩崎ともうまくやっているようで、時折、ふたりで談笑している様子を見かけて、ほほえましく思っていた。

 まるで穴に籠った小動物のように、外の世界に怯えている優紀の様子が気になって、かなり強引にプロジェクトに引っ張り込んだけれど、やはり正解だったと思っていた。

 それなのに、さっきの優紀の表情はあまりにも憂いに沈んでいて、また振りだしに戻ってしまったのかと、焦燥に駆られた。

 どうしても優紀の心を開くことができない自分がふがいなくて、気づいたら彼女の唇を奪っていた。
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