もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 その後、ジムやエステ、それに毎日食事を提供してくれたカフェの皆さんに挨拶してから〈リインカネーション〉を後にした。

 皆さんにはああ言ったけれど、一人になってみると、心にぽっかり穴が開いたことがわかった。

 おかしな話だ。
 モデルを続けることを悩んでいたのだから、やめることができてちょうど良かったと思ってもいいはずなのに。

 でも、なくなってみてはじめて、自分が今回のプロジェクトでどれほどの充実感を得ていたか痛感していた。
 
 本当は続けたかった。

 でも、やっぱり、自分には分不相応なことだったんだ。

 モデルをすることも。玲伊さんと日常的に接することも。

 長い長い夢を見ていた、そんな気持ちだった。


 そんなことを考えながら、ビル前でぼんやりと信号待ちをしていると、玲伊さんが「優ちゃん」と追いかけてきた。

「玲伊さん」
 荒い息が少し落ち着くと、彼は頭を下げた。

「昨日は本当にすまなかった」
 玲伊さん、いつもより硬い表情をしている。
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