もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 涙がにじむ。

 もちろん、悔しい気持ちはある。

 やっと、いろんなことに慣れてきたところだった。

 エクササイズも薬膳の食事も。
 毎日鏡を見るのが楽しみになるなんて、少し前までは思ってもみなかったことだった。

 でも仕方がないことだ。
 自分ではどうすることもできない。

 
 着替えを終えて店に降りていくと、おばあちゃんがすまなそうな顔でわたしを見た。

「さっきはごめんよ。つい、カッとして、言わなくてもいいことを言っちまって」

 わたしは微笑んで首を横に振った。

「ううん、わたしのためを思って言ってくれたんじゃない。悪いことなんてない。ねえ、おばあちゃん、奥で休んでて。玲伊さんのところに通い始めてから、ずっと負担かけてたし。今日はもうゆっくりして」

 祖母はまだ何か言いたそうに口を開きかけたけれど、そのまま奥に入っていった。

 ふーっと大きなため息をひとつついて、わたしはレジ前の椅子に腰をかけ、伝票の整理をはじめた。

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