もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

***

 その日の午後9時過ぎ、わたしは玲伊さんの待つカフェに出向いた。

 ガラスの向こうに彼の姿を認め、わたしはドアを開けて、その席に向かった。

 そして、観葉植物で隠れて見えなかった、もうひとりの存在に気づいた。

「優ちゃん」

 玲伊さんと一緒に、笹岡さんが立ち上がった。
「加藤さん、今朝はどうも」
「こんばんは」

 とっさに笑顔を作ろうとしたけれど、できなかった。
 玲伊さんに促され、わたしはふたりの向かいに座った。

 彼は店員さんに手で合図した。

「何がいい?」
「あ、じゃあアイスティーで」
 なかば上の空で、わたしはそう答えた。

 そのとき、頭のなかでは、これから玲伊さんに言われるであろうセリフが駆け巡っていた。
 
 『昨日ははずみであんなことをしてすまなかった。優ちゃんが言っていたとおり、俺たちは付き合っているんだ』と。

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