もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
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その日の午後9時過ぎ、わたしは玲伊さんの待つカフェに出向いた。
ガラスの向こうに彼の姿を認め、わたしはドアを開けて、その席に向かった。
そして、観葉植物で隠れて見えなかった、もうひとりの存在に気づいた。
「優ちゃん」
玲伊さんと一緒に、笹岡さんが立ち上がった。
「加藤さん、今朝はどうも」
「こんばんは」
とっさに笑顔を作ろうとしたけれど、できなかった。
玲伊さんに促され、わたしはふたりの向かいに座った。
彼は店員さんに手で合図した。
「何がいい?」
「あ、じゃあアイスティーで」
なかば上の空で、わたしはそう答えた。
そのとき、頭のなかでは、これから玲伊さんに言われるであろうセリフが駆け巡っていた。
『昨日ははずみであんなことをしてすまなかった。優ちゃんが言っていたとおり、俺たちは付き合っているんだ』と。