もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 覚悟して待っていると、予想と反して、玲伊さんではなく、笹岡さんが話しはじめた。

「オーナーから加藤さんがわたしたちのことを誤解していると聞いて、わたしが直接お話ししたほうがいいと思って」
 

 グラスの水を一口飲んでから、彼女が語りだした話は、まったく思いもよらないものだった。


「あなたがわたしたちを見かけた日はね。亡くなったわたしの婚約者の命日で墓参りに行ったのよ。オーナーも彼の友人だったから」
「えっ?」

 彼女は静かな表情のまま、話を続けた。

 大学を卒業した笹岡さんはニューヨークの日系企業に就職した。
 同じころ、玲伊さんもニューヨークの美容院に勤めていて、笹岡さんがお客さんになったのがきっかけで知り合ったそうだ。

 当時、互いに付き合っている人がいて、たまに4人で飲みにいくような間柄だったと彼女は言った。

「わたしの彼は日本人で、同じ企業に勤めていたの。その次の年、日本に帰って結婚することも決まっていて」
 
 でも、幸せなふたりに悲劇が襲った。

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