もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 射抜くような視線から逃れるように目を逸らすわたしの様子に、彼の声のトーンがにわかに暗くなった。

「そうか。優ちゃんはやっぱり俺が嫌いなのか」

「えっ?」
 もう一度、彼のほうを見ると、切なげに眉を寄せている。

「やっぱりそうなんだな。再会してから、いつまで経っても気を許してくれなかったしね。でもそれなら仕方がない。きっぱり諦めるよ」

 寂しげな彼の声が耳に入ってきた瞬間、厳重にかけていた心の扉の留め金がはじけ飛んだ。
 
 そんな、嫌いな訳があるはずない。

「き……嫌いなんかじゃないです。わたしも玲伊さんが好きです。もう、ずっとずっと前から」

 必死でそう答えると、玲伊さんはふっと微笑みを浮かべて言った。

「優ちゃん」

 玲伊さんはアイスティーのグラスに添えていたわたしの手を、両手ですっぽり包み込んだ。

 彼の、しなやかな大きな手で。

「嬉しいよ」

 優しくわたしを見つめる目のなかに、驚きは感じられなかった。

< 161 / 277 >

この作品をシェア

pagetop