もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 でもなんとか目を逸らさずに、わたしは答えた。

「もちろん、“はい”です。でも、嬉しくて、どうしたらいいかわからない」

 そう言って熱くなった頬を手でぱたぱたあおぐと、彼は小さく吐息をこぼすように言った。

「ああ、もう、やっぱり優ちゃんは可愛い」

 それからすぐ、カフェを出た。

 玲伊さんはわたしの肩に腕を回して、抱き寄せた。
 
 ずっと憧れていたシチュエーションが現実になって、こうして、死ぬまで一緒に歩いていられたら……
 そんなバカなことを考えてしまうぐらい、幸せで。
 
 書店の前に着いたとき、そのまま抱きしめられた。
 とても、温かくて優しい抱擁だった。

 前にハグされたときはあんなに切なかったのに。
 今は、体が蕩けて流れ出してしまいそうで、わたしは彼の背に手を回してぎゅっとしがみついていた。

 そんなわたしを、彼もいっそう力をこめて、抱きすくめた。

「好きだよ、優紀」

 優ちゃんではなく「優紀」と耳元で囁かれて、本当に彼の腕のなかで意識を失ってしまいそうになった。

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