もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「でも、わたしだけ、こんなに幸せでいいのかな……」
 ふと、さっきの笹岡さんの静かな笑顔を思い出して、わたしは呟いていた。

「笹岡のこと?」
 わたしは彼の胸に抱かれたまま、頷いた。

「優しいからね、優紀は。でも……」

 玲伊さんはそこで一旦、話を切った。
 どう言葉を紡げばいいか、逡巡しているようだった。

 それから彼は、わたしにこの上もなく優しく、包み込むような眼差しを注いだ。

「とっても残念なことだけどさ……生きていると辛いことに遭遇してしまうこともある。俺たちだって、この先はどんな不幸に見舞われるか、それはわからない。それは、自分たちの力でどうこうできることじゃない。でも、だからと言って、今ある自分の幸福をないがしろにする必要はないんじゃないかな。もし俺たちが笹岡に悪いからと考えて、付き合うのを遠慮したら、彼女が喜ぶと思う?」

 わたしは首を横に振った。
「そんなことはない、と思う」

「だろ? いや、もちろん、俺たちのために、自ら進んでつらい出来事を話してくれた彼女には、いくら感謝してもしきれないけど」






 

 
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