もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 わたしはレジに戻り、ミステリ小説で凶器に使えそうなほど分厚い本を後ろの棚から出し、レジ横の机の上に置いた。

 「これですね。えっと、十六万五千円……わ、高っ」
 玲伊さんは財布から一万円札の束を取りだした。

 「ほとんど誰も読まないような専門書だからね。あ、領収書、書いてくれる?」
 「ちょっと待ってください」

 収入印紙、確かこの辺に……
 5万円以上の領収書なんて、ほとんど書かないから。

 「あ、あった!」
 「面倒かけるね」
 「いえ、こちらのせいですから。いまだにクレジットカード対応してないから」

 「いや、昔のままだからいいんだよ、ここは」

 そう言いながら、ふっと微笑まれたりすると、いやでも心臓がばくつく。

 とにかく、とにかく素敵すぎて困る。

 髪の色はダークブラウン。
 清潔感のあるショートヘア。
 センターで分けた前髪からのぞく額が美しい。

 それ以外の顔立ちもいたって端正だ。
 綺麗な形の眉毛と切れ長で二重瞼の眼。
 鼻梁はすっと通り、下唇だけほんの少し厚め。
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