もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 もう、本当に「ずるい」と言いたくなるほどの美形。

 昭和感満載の木造ニ階建てのこの店には、まったく似つかわしくない麗しさだ。

 服装は仕立ての良いブラックスーツに水色のシャツ、品のいいブラウンの細かい柄のネクタイ。

 彼の店のスタッフの制服は男女問わず、ブラックスーツだ。

 施術するときは、上着を脱いで、ベストにネクタイ姿となる。
 それがワンランク上の高級感を醸し出し、顧客に好評なのだそうだ。

 それに引きかえ、こちらはといえば……

 紺のパーカーにボーダーのカットソーとジーンズ。
 髪は伸ばしっぱなしのロングで、ゴムで耳の後ろ辺りで結んでいるだけ。
 かろうじてファンデーションがわりに下地クリームを塗っただけの、ほぼノーメイクの顔にピンク系メタルフレームの眼鏡。

 ぱっと見は中学生。
 25歳の妙齢の女としては、お恥ずかしい限りの無頓着さだ。

 極めつきは出版社のキャンペーンで配られた、パンダのイラストつきエプロン。

 びしっと決めているセレブな玲伊さんの隣に立てば、お手伝いさんにしか見えない。

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