もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 結構お似合いじゃないかな、このふたり。

 そんなことを考えていると、柄の長いスプーンでアイスをつつきながら、律さんはわたしに訴えてくる。

「ねえ、優紀さん、戻ってきてくださいよー」

 わたしは苦笑した。
「それ、わたしに言われても困るけど」
「でも、ほんっとにむかつくんですよ、あの、桜庭乃愛(のえ)。名前だけは可愛いんですけどね」

「えっ? あっ」
 手がテーブルの上のグラスにあたり、水をこぼしてしまった。

「あ、ごめん。濡れなかった?」
「ぜんぜん平気です。あれ、優紀さんこそ大丈夫ですか? 顔、真っ青だけど」
「え、そう? ね、本当にその人の名前、桜庭乃愛なの? どんな字?」

 律さんは、ポシェットからボールペンを出して、ナプキンに書いてくれた。

 桜・庭・乃・愛、と。

 同じだ。本人に間違いない。

「知ってるんですか? この人のこと」
「前の会社の同僚だったから」

「そうなんですか。それはびっくりしますよね」
「ええ」

 つい沈んだ調子で答えてしまったわたしに、律さんは遠慮がちに尋ねた。

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