もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「やっぱりそうか。さもありなん、だけどね。あの子なら」

 彼は少し目をすがめ、なにかを企んでいるような顔で笑った。
「しかし『とんで火にいる夏の虫』って言うのは、まさにこのことだな」

「えっ?」
「いや、こっちのこと。そうだ、優紀、今夜からまた髪のケアを始めたいんだけど」
「どうして? もう必要ないんじゃ……」

 彼はわたしのそばに寄ってきて、髪を手に取って、手触りを確かめた。

「良かった。まだそれほど傷んでいないな。いや、ちょっと考えてることがあって。髪のケアだけでなく、また少しの間、運動や食事も頑張ってほしいんだけど」

「ずっと?」
「とりあえず、一周年記念の日までだから、ひと月ちょっとぐらいかな」

「それって、わたしも出席するってこと?」
「そうだよ。優紀は俺のパートナーなんだから、当たり前じゃないか?」
「でも……」

 当日は〈シンデレラ・プロジェクト〉のモデルとして、桜庭さんも出席するはず。

 そう思うと、とたんに心が怖気づいてしまう。
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