もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 そう言いながら、わたしの前髪を長くしなやかな指先で整えてくる。

 だから……そんなふうに触ってくるから困るのだ。
 
 わたしは邪見に彼の手を払った。
 「余計なお世話です」

 さすがにきつい言い方だったかなと思ったけれど、玲伊さんは気を悪くする様子もなく、余裕の笑みを浮かべている。

 あー、そんなふうに目を細めて微笑まないで。
 その笑顔、強力すぎる武器なんだって、わかってないのかな、この人。

 「じゃあね、また来るよ」
 「あの」
 帰ろうとする彼に、わたしはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。

 「何?」
 「なんでいつも、わざわざうちに本の注文してくれるんですか? ネットのほうが断然早いのに」

 わたしの言葉が終わらないうちに、彼はレジカウンターに1歩、近づいてきた。
 そして、年代もので傷がつきまくっている木製カウンターの上に片肘をついて顎を乗せ、わたしをじっと見つめてきた。

 わ、なになに?

 「理由、聞きたい?」
 「は、はい」
 返事をすると、彼はなぜか、かすれた甘い声で囁きかけてきた。

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