もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
玲伊サイド:ふたたび彼女に施術する理由

 
「一時はどうなることかと思いましたが、香坂さんや笹岡さんのおかげでなんとか今日までこぎつけられて、本当に感謝しかありません」
 心底、ほっとした顔で紀田さんは言った。

「いえ、紀田さんこそ、いろいろ気苦労が多かったでしょう。お疲れ様でした。またイベント当日の件はあらためて」

「はい、そうですね。また、ご連絡させていただきます」


 8月半ばのある土曜日。
 その日は〈シンデレラ・プロジェクト〉の施術の最終日だった。

 紀田さんとSHIHOさんを出口まで見送った後、俺は笹岡と一緒に、応接室で待つ桜庭乃愛(のえ)のところに行った。
 
「もう、遅いから待ちくたびれちゃった」
 カフェから持ってこさせたアイスティーを飲みながら、桜庭乃愛が笹岡に向かって不満げにこぼす。

 そんな彼女の態度にも、笹岡は眉ひとつ動かさず、丁重に言葉を返した。

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