もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「長期間、弊社の施術にご協力いただきまして、本当にお疲れ様でした。次回は9月にイベント用のドレスを選びにいらしてください。その際、またご連絡を差し上げますので」

 桜庭は横目でちらっと笹岡を見て「そう」と一言だけ返した。

 岩崎が担当を降りてから、自身の忙しい仕事の合間を縫って、笹岡は彼女の面倒を一手に引き受けていた。
 桜庭は相変わらず、いろいろ難癖をつけていたが、笹岡が大人の対応をしてくれていたおかげで、なんとか最終日までこぎつけた。

 ようやく終わった。
 二人の様子を眺めながら、俺は心のなかでほっと息をついていた。

『〈シンデレラ・プロジェクト〉はわが社にとっての重要な宣伝活動なのだから、間違っても彼女の機嫌を損ねないように』
 と笹岡に何度も釘を刺されていたので、俺も表面上は穏やかに接していたが、内心は活火山の下で燃え(たぎ)っているマグマのように、いつ爆発してもおかしくない状態だった。

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