もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「俺、優ちゃんに会いに来てるんだけど」

 砂の一粒分さえも考えていなかったことを臆面もなく言われ、わたしはしばし絶句した。

 だから、困るんだって!
 こうやって、いつも思ってもいないことを口にして、わたしをからかって遊ぶんだから、この人は。

「またまた。そんな心にもないこと」
「そんなこと、ないって」

 彼は目を逸らさずにいう。
 もう、まともに目なんか見られない。

「そんなこと……あるはずないし」

 赤面して俯くわたしを見て、彼は嬉しそうに目を細めた。

「ははっ、優ちゃんはやっぱり可愛いな。顔、真っ赤だよ」

 ほら! やっぱり。
 また、からかわれた。

 わたしはふくれっ面をした。
「もう、玲伊さん、ふざけすぎです」

「ごめん、ごめん。でもそういう顔、させてみたかったんだよ。昔の優ちゃんみたいだ。最近、怖い顔でにらまれてばっかりだったから」

「昔の?」
「ああ、ここで浩太郎と三人で遊んでいたころのね」

 玲伊さんは分厚い本の入っている袋をひょいっと持ち上げた。

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