もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

 そして、驚きが収まると、喜びの感情が怒涛のように襲ってきた。

「優紀、返事は?」

「……苦しい」
「えっ?」
 意外すぎたのだろうか。玲伊さんが戸惑った声を出す。

 わたしは慌てて言い添えた。

「嬉しすぎて、苦しい」

 玲伊さんはぷっと吹き出した。
「なんだよ、それ」

 そのとき、わたしの頭のなかには、これまでのさまざまな記憶が駆け巡っていた。

 小1で出会った、大好きな玲伊にいちゃん。

 会えなくなったときはどれほど悲しかったか。
 今でもその感情はありありと思い出すことができる。
 
 そして、兄から玲伊さんが大企業家の息子だと聞いたときには、彼が本当に遠い存在なのだと気づかされた。
 それからは、ひたすら忘れようと努力し続けた。

 でも、再会してしまった。
 叶わないとわかっていながら、彼に惹かれる自分をどうすることもできずにいた。

 その彼にプロポーズされたのだ。

 すでに一緒に暮らしているとはいえ、結婚はまったくレベルの違う喜びを、わたしに与えた。

 一言では片づけられない、さまざまな感情が渦巻いて、涙が零れおちてゆく。
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