もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「嬉し涙だよな、それ」
 わたしは頷き、そして彼の胸に飛び込んだ。
 
 玲伊さんは、しゃくりあげ続けるわたしの髪を、優しく撫でてくれていた。

「落ち着いた?」
「うん」
 
 彼はわたしの左手を取って、薬指に指輪をはめてくれた。

 篝火に照らされたそれは、戸惑ってしまうほど、豪華で。

「ここに着いたときから、いつ言おうか、実はひそかにドキドキしてたんだよ」

 わたしは鼻をすすりながら、答えた。
「どうして? わたしが断るはずないって知ってるのに」

「そんなこと、言ってみないとわからないじゃないか。お付き合いはいいけど、結婚は嫌、って言われることだってあるだろう」

「そんなはず、ないのに」

 玲伊さんは照れたように、髪を掻き上げて言った。

「前にも言ったよね。男は本気の相手を前にすると、ものすごく臆病になるんだって」

 でも、いつも余裕があって、わたしを手のひらで転がしてるような玲伊さんにも、そんなところがあるとは、まだ信じられない。


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