もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「へえ、優ちゃん、太客(ふときゃく)の頼みを断るんだ? ずいぶん強気な商売だな」

 ホストクラブやキャバクラじゃないんだから、太客って言い方はどうかと思うけど、確かにご指摘の通りだ。

 今日みたいな個人的な注文に限らず、玲伊さんは、毎月、店に置くための雑誌を大量に注文してくれる。
 近隣の多くの美容室が、雑誌からタブレットに切り替えているなかで、本当に貴重でありがたいお客様だ。

「うー、わかりました。1時ですね」
 そう答えると、彼は勝ち誇ったようににっこり笑った。

「うん、待ってるから」
 そして、ようやく歩き出し、後ろ姿のまま手をあげて、その場をあとにした。

 わざわざ時間を指定されるなんてはじめてのことで、なんだか嫌な予感がするけど。

 それにしても、あー、どうしてあんなに素敵なんだろう。

 もう、玲伊さん。
 どこまでわたしを惑わせれば気が済むのかな。

 さっきみたいなやり取りをしていると、つい彼を身近に感じてしまう。
 ここで一緒に遊んでいた子供のころのように……

 いやいやいや。
 間違ってはいけない。
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