もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「ありがとう、律さん。でも見とれるっていうのは言い過ぎだと思うよ」とわたしは首を振る。

「ほんとです。お世辞は1ミリも入ってないです。だいいち、このドレスを着こなせるなんて、ハリウッド女優、いや、もはや女神レベルじゃないですか」

 今日、着る予定になっているのは、スパンコールがV字に配されたシャンパンゴールドのマーメードラインのイブニングドレス。

今はまだ、窓のそばに置かれたボディーに着せられて、ライトの光を浴びてきらめきを放っている。

 玲伊さんが無理を言って、日本に出店しているフランスのオートクチュール専門のメゾンに超特急で作ってもらったもの。
 そこのチーフデザイナーさんも彼の顧客だったために、可能となった離れ技だった。

「もう、いつもお世話になっている香坂さんだから引き受けたけれど、他の人には絶対、内緒よ。わたし、これからずっと徹夜仕事しなければならなくなってしまうから」

「もちろん言いませんよ。本当に感謝しています。次回の施術、とことんサービスさせていただきますから。1時間のヘッドスパとスペシャルトリートメント付きで」

 そんなやり取りがあって、驚異の短期間で縫い上げていただいたものだった。

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