もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「待たせたね。急いでメイクしないと」

 そう言いながら、テイルコートを脱いでハンガーにかけた。

 上着の下の装いは、白シャツに白い蝶ネクタイ。光沢の美しい黒の拝絹地のスラックスに優雅なオペラパンプス。

 完璧な正装姿は気品にあふれていて、彼を見慣れているはずのわたしの目にも、やっぱり神々しいほど光輝いている。

 玲伊さんはわたしにケープを着せると、髪を丁寧にとかし、サイドの髪を少しだけ取って後ろで結び、ドレスと相性のいい色合いの生花のブーケを飾った。

 昨晩のオイルパックの効果か、鏡に映るわたしの髪はいつもに増して艶めいて見える。

 それから、彼は正面に回り、丁寧に下地を作ってファンデーションを塗り、それから熟練の職人的手際で、鮮やかにメイクを施していった。

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