もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 大丈夫。ちゃんとできる。

 それにわたしはもう、香坂玲伊の妻なのだ。
 彼のためにも、恥ずかしいふるまいなんてしていいはずがない。

 わたしは左手をかざした。

 薬指には、誓いを交わした証が、ちゃんと見守ってくれている。
 
 手洗いを終えて廊下に出ると、ちょうどエレベーターが到着したところで、岩崎さんが降りてきた。

 「オーナーからお迎えに行くように言われて」
 「じゃあ、ドレスを着るのを手伝ってもらっていい?」
 「もちろん」

 律さんの手を借りて、普段着からドレスに着替えた。
 今日は特に念入りに、後ろ姿もチェックしてもらった。

 「じゃあ、行きましょうか」
 「はい」

 最終決戦に挑むような心持ちで、わたしは閉まってゆくエレベーターの扉をじっと見つめていた。

 
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