もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 わたしはもう、王子様とのロマンスを夢見るような歳じゃない。

 ありえない仮定だけど、もし玲伊さんとわたしが付き合ったとしても、その物語の結末はハッピーエンドではなくバッドエンドに決まっている。

 独身で、男盛りでイケメン。

 三拍子そろった彼は、スキャンダル好きな世間の人たちの恰好の餌食で、顧客のモデルさんや女優さんとの噂は引きもきらない。

 さっき、兄が「女たらし」と言っていたのも、まったく根拠がない話、という訳でもない。

 まあ、それがただの根も葉もない噂だとしても、御曹司でもある彼に似合うのは、家柄の良い深窓のご令嬢。
 もしくは、彼の仕事をサポートできる、有能な女性。

 どちらにしろ、自分にはそんな資格、まったくない。

 あーあ、子供のころはよかったなぁ。
 家柄とかそんなこと、まったく考える必要がなかったから。

 玲伊さんが好き。
 ただ、それだけでよかったのに。

 わたしはふーっと大きく息を吐き、椅子に座り直した。

 そして気を取り直して、お客さんに頼まれていた本の注文をするため、ノートパソコンを立ち上げた。


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