もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 わたしはさらに耳をそばだてた。

「ふふっ、いいでしょう。彼、とーっても紳士よ。顔がいいだけじゃなくて、ものすごく優しいし。今度、家に誘おうと思ってるの。おじい様も彼に会いたいんだって」

 ひときわ得意気な調子だ。

「えー、何それ。もしかして、お婿(むこ)さん候補?」
「うわ、羨ましすぎるんですけど」

 その話を聞いていた律さんがくすっと笑った。

「何も知らないんですもんね。あの人たち」



 そのとき、彼女のイヤホンに連絡が入った。
「あ、はい、了解です」

 彼女は目を輝かせてわたしを見た。

 「いよいよですよ。優紀さん」

 わたしは彼女に頷きを返した。


 それから律さんに先導されて、わたしは〈ルメイユール・プラ〉の入り口の前に立った。


 彼女がドアを開けると、とたんにさざ波のような(ざわ)めきが耳に入ってきた。
 人々の声に交じって、軽やかな室内楽の生演奏も聞こえてくる。

 誰も、こちらを気にしている様子はない。

 
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