もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 演奏が再開し、それぞれのテーブルの話し声もまたにぎやかさを取り戻した。

 大方の人は、わたしを好意的に受け入れてくださったようだ。
 けれど、そのなかに、ひときわ大きな|疑問の声が混じっていた。

「ねえ、あの、“加藤優紀”ってこと?」
「いや、別人だろ。同姓同名じゃないのか」
「そうよね、あそこまで変わるわけないよね」
 
 その声を聞きつけた玲伊さんは、すかさず鋭い言葉を放った。

「いいえ、こちらにいるのは、皆さんがよくご存知の、加藤優紀ですよ」と。

 椅子がガタンと大きな音を立てた。
 桜庭乃愛が立ちあがって大きな声で叫んでいた。

「嘘よ! 何かの間違いよ! あんな、同期で一番ダサかった女が香坂さんと結婚するなんて……それにこんなに綺麗になれるはずない!」

 会場中の視線が一斉に彼女に集まった。
 皆、一様に眉をひそめている。
 さすがに気まずく思ったのか、彼女は険しい表情のまま、席についた。

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