もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 玲伊さんはそんな彼女に凍りつきそうなほど冷ややかな視線を投げた。
 そして、ふたたびマイクの前に立ち、話しはじめた。

「あなたも認めたということですね。優紀の美しさを。彼女は大変な努力を重ねて、この美しさを手に入れました。あなたが嫌がってやらなかったことも含めてね。でも、間違えないでいただきたい。私は外見の美しさだけに惹かれて、彼女に妻になってほしいと思ったわけではない」

 玲伊さんは、そこで一旦、話を切って、会場を見渡した。
「申し訳ございません。あと、もう少しだけ、私事(しじ)を申し上げることをお許し願えますでしょうか」 

「かまいませんよ。どうぞお続けになって。わたくしもとても気になるわ。その可愛らしい方との馴れ初め」とさきほど、声をかけてくれた老婦人がとりなした。

 後で聞いたところによると、彼女は元首相の奥様で、今回のパーティーのうちでも賓客中の賓客だった。

「光島様。どうもありがとうございます。ではお言葉に甘えまして」

 そう言って、玲伊さんはふたたびマイクの前に立った。

 そのときのわたしは……
 萎縮することもなく、かといって、(おご)(たかぶ)ることもなく、ただ真っすぐに会場の人々を見つめていた。

 
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