もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 光島と呼ばれたそのご夫人は、そんなわたしに、とても温かな眼差しを向けてくださっていた。

「妻と初めて出会ったのはまだ小学生のころで、記憶の中の彼女は、はにかみ屋だけれど、ほがらかに笑う可愛いらしい少女でした。けれど再会したとき、彼女の様子があまりにも違っていて驚きました。にこりともせず、つねに暗い表情を浮かべていた。自信を失っているのが一目瞭然だった。心配した彼女の家族や私が尋ねても、なかなかその訳を話してはくれませんでした。そして原因を探っていくうちに……」

 玲伊さんは、桜庭乃愛の席に目を向けた。
 そのテーブルに座っている人は全員、ばつが悪そうに下を向いている。

「他人を蔑んで踏みつけにして喜んでいるような輩に、深く傷つけられたせいだとわかりました」

 ただひとり、桜庭乃愛だけは、顔を下げずにわたしをにらみつけていた。
 けれど、わたしもけっして、以前のように目を逸らしたりしなかった。
 当てが外れた彼女は眉を寄せ、それから目線を外した。

 玲伊さんは話を続けた。
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