もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「そして、彼女への施術を通して、大切なことに気づきました。〈リインカネーション〉は、開業当時より変わらず、お客様にトータルな美をご提供することをコンセプトにしております。ただ、これまでは、どちらかといえば、外見の美を重視してきました」

 そこで玲伊さんは、桜庭乃愛の席にもう一度目を向けた。あくまでも冷ややかな眼差しで。
 彼につられて、会場の視線も彼女に集まる。
 乃愛はただ、わなわなと唇を震わせていた。

「もちろん、私どもは美のプロフェッショナルです。どのようなお客様からも美を引き出せるテクニックは持ち合わせております」

 それから、わたしの腰に手を回して、そっと抱き寄せ、柔らかく微笑んだ。

「しかし、そんな見せかけの美は真の美には到底叶わない。では、真の美はどうしたら得られるのか。では、真の美はどうしたら得られるのか。それには内面を磨くことしかない、と考えるようになったのです。今後、私どもはあらゆる施術を通じて、真の美を追求してゆきたいと考えております。そのための具体的なアイデアはいくつも浮かんでいるのですが、これ以上は長くなるので、ここでは申しません。先日、『KALEN』の取材を受けましたので、詳しくはそちらをご一読ください。紀田さん、何月号でしたっけ」

 玲伊さんは真ん中あたりに座っていた紀田さんに声をかけた。

「あ、次月号、11月号になります。お手に取っていただけましたら嬉しいです。あ、あの、香坂さんの麗しいお写真も多数載せておりますので」と深く腰を折った。
 
「なんか、最後は宣伝になってしまい申し訳ありませんでした。では引き続きお食事をお楽しみください。もう、しゃしゃり出ずに大人しくしておりますので」
 


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