もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
第2章 シンデレラ・プロジェクトって?
2日後、約束の時間に〈リインカネーション〉に向かった。
うちの店から徒歩3分。
大通りに出て、道路を渡った向かい側にあるビルだ。
いつものように裏手にある従業員口の受付で本の受け渡しをしていると「加藤さんですか?」と声をかけられた。
「はい、そうですけれど」
「香坂オーナーにご案内するように言われています。どうぞこちらへ」
アシスタントらしき男性はそれだけ言うと、さっさと先を歩いていってしまう。
そりゃ、一昨日の話ぶりから、ただで帰れるとは思ってなかったけど。
不審を抱きながらも、わたしは彼の背中を追って、ビル脇にある石畳が敷かれた通路を通り、正面に回った。
大通りに面したこのビルのファサードは、夜になるとダイアモンドのように白銀色にライトアップされる。
神々しく輝くさまは、まるで香坂玲伊という美しき王が君臨する現代の城のように思える。
そういえば、正面から入るのは、今日がはじめて。
これまで従業員口しか使ったことがなかったから。