もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 多くの方たちにこれほど祝福されるなんて、思ってもみなかった。
 本当に律さんの言ったとおりになったな、と思っていたとき……

「加藤さ、あ、香坂さんよね。今は」
 と声をかけられ、わたしは表情を引き締め、顔から笑みを消した。
 
 桜庭乃愛の取り巻きのうちのふたりだ。
 
「加藤でかまいませんよ」

 声をかけてきたのは、たしか、わたしより1年先輩の山守さんという人。

「ご結婚、本当におめでとう」
「ありがとうございます」
 堅い表情のまま、わたしは礼を口にした。

「実はね、わたしたち……」
 少し言いにくそうに、彼女は口ごもった。

 すると、もうひとり、同期だった井口さんが続けた。

「ずっと、加藤さんに申し訳ないと思っていて。会社を辞めるなんて考えもしなかったから」

 それには答えず、わたしは彼女たちを見つめていた。

「うちの父の上司が桜庭さんのお父上ってこともあって、彼女に頭が上がらなくて……いえ、彼女のせいにしてはいけないわね」と、山守さんが続けた。

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