もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「本当にとても心配だった。あなたを不幸にしてしまったんじゃないかと。だからあなたの幸せな姿が見られてとても嬉しかった。それだけ、どうしてもお伝えしたくて」

 どう答えようか、わたしは少しの間、思案した。
 それから、あらためて彼女たちに視線を向けた。

「……『もう、そんなこと、気にしないでください』とは、とても言えないです。それぐらい傷ついたことは確かなので。言いたいことはいろいろあるけれど、もう済んだこと。言わずにこの胸にとどめておきます。ただ、ひとつだけ……」

 その言葉に、彼女たちは表情を引き締めてわたしを見た。

「どうか、もう桜庭さんの言いなりにならないでください。もう二度と、第二のわたしを生み出さないでほしいです」


 ふたりは、もう何も言わずに深く頭を下げると、その場を後にした。

 わたしはしばらく、彼女たちの背中を目で追っていた。
 
 隣にいた玲伊さんが、無言でわたしの頭に軽く触れた。

 そのあたたかな感触が、「今ので良かったんだよ」と伝えてくれているように、わたしには思えた。
 
 
 




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