もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「ん、どうした? 岩崎」
 頭にタオルをかぶったまま、玲伊さんは岩崎さんの顔をちょっと覗き込んだ。

「いえ、あの、桜庭乃愛が大人しくしてるかなと思って。何か仕返しをしてくるんじゃないかなとちょっと心配で」

 玲伊さんは律さんの肩をぽんぽんと優しく叩いた。

「たぶん、大丈夫。彼女の家、それどころじゃなくなるから」

「どういうこと?」
 わたしが訊くと、玲伊さんが答えた。

「いや、明日の週刊シュウブンに、彼女の祖父に関する記事が出るはずだから」

 玲伊さんはある伝手から、桜庭茂三郎が国有地を破格値で手に入れたことを知り、週刊誌の記者の友人に情報提供していた。

「その裏が取れたと、連絡をもらったんでね」

 どうも、ある大物政治家に賄賂を贈った見返りの便宜ということらしい。

「政界と財界の関わる大スキャンダル。久々の特大スクープになりそうだと、興奮気味だったよ。そいつ」と彼は満足気に頷いた。

「でも、それはあくまで彼女の祖父のことでしょう」と笹岡さん。
 
「ああ、もう一つ、手は打ってある。笹岡、秀ちゃんって知ってるっけ?」
< 263 / 277 >

この作品をシェア

pagetop