もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

「オーナーによく似た従兄の? あの、男前だけどちょっと怪しげな。今日も来られていましたね」

「ああ、俺が呼んだからね。あの人、くせのある女性が好みでさ。桜庭乃愛の話をしたら、興味津々でね」

 玲伊さんは、ちょっと口の端を上げた。

「今ごろ、どっかで口説いてるんじゃないかな。そんな男に言い寄られて翻弄されたら、彼女も人のことになんて、かまっていられなくなると思うよ。遠慮なく振り回してくれって、念を押してあるし」

「まったく、相変わらずぬかりありませんね、オーナー」
 笹岡さんは、なかばあきれたような声で言った。

「それは誉め言葉と受け取っていいのかな?」
「どうぞご随意に」

 わたしも、笹岡さんの意見に完全同意だった。

 実は、今回のパーティーでわたしたちの結婚を発表することにしたのは、桜庭乃愛の件のためだけでなかった。

 なんの後ろ盾もないわたしとの結婚に、難色を示している彼の祖父を出し抜く意味も込められていた。

 玲伊さんの顧客には、光島夫人を筆頭に各界のセレブが居並んでいる。

 そんな方たちが集まっている場で結婚を公にしてしまえば、さすがに祖父も文句を言えないだろうという、一石二鳥の作戦だったらしい。
 
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