もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 本当にぬかりがない人だと、あらためて思う。

 玲伊さん、いや、わたしの夫は。

***

 わたしたちは打ち上げから早々に部屋に引き上げた。

 ビールかけ被害のせいだ。

 でも、二人ともかなり疲れていたので、それはそれで、いい口実になった。

「うわ、まだ、べたべたしてる。気持ちわるっ」

「早くシャワー浴びなきゃ」
 玲伊さんはシャワーブースに直行し、わたしは着替えやタオルを持って、後に続いた。
「タオル、置いておくね」とわたしが言うと、中から「優紀も浴びたらいい」と彼。
「うん」とわたしも言葉を返した。

 ここで暮らしはじめたころなら、絶対にためらうシチュエーションだ。

 でも慣れというのは恐ろしいな、と思いつつ、ドレスを脱ぎ、彼の待つシャワーブースに入っていった。

 贅肉というものがまったくない、引き締まった彼の体は芸術品のようで、感心して見とれてしまう。
 西洋の美術館に陳列されている古代の彫刻にも、まったく引けをとらない。

 遠目で眺めていて、なかなかそばにいかないわたしに焦れて、彼は手を差し伸べる。

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