もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「リインカネーションの一周年と、優紀のリインカネーション(再生・転生)に、あらためて乾杯」

 グラスを合わせてきた彼に、わたしは尋ねた。

「わたしの〈リインカネーション〉って?」
「ああ。今日限りで、もう過去を思い悩むことはなくなるだろう?」

 本当にそうだ。
 もう彼女の鋭い目つきを思い出しても、何ひとつ恐れの感情は湧いてこなかった。
 彼は微笑み、それからわたしの髪に指を絡めた。

「それにしても今日の優紀は本当に素敵だった。惚れ直したよ」
「でも全部、玲伊さんのおかげだから」

 彼はわたしの髪を口元に持っていき、軽く口づけをしながら、わたしを見つめる。

「いや、俺は導いただけ。優紀の努力が実を結んだんだよ」

 手放しで褒めてくれるのはとっても嬉しいのだけれど、照れ臭くなってしまう。

 そんなことないよ、わたしは首を振り、それから話を変えた。

「そうだ。わたし、これからもエクササイズ続けたい。体が軽くなると調子がいいことがわかったから」
 
「ああ、いいんじゃないかな。結婚式も控えてるしな。でもあんまり筋肉をつけないように気をつけろよ。優紀、ハマると徹底的にやるだろ」
 と言いながら、彼はわたしの二の腕を撫でた。

「うん、そうだね。気をつけます」

「あー、それにしても、いい夜だ」
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