もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 彼は甘えるように、わたしの肩に頭をもたせかけてきた。

 その様子がなんだか子供みたいで、わたしは腕を回すと、彼の頭をそっと撫でた。

 仕事中の彼からは、とても考えられない無防備な姿。
 わたしだけが知っている玲伊さん。
 わたしの心に彼への想い、そして愛おしさが募ってゆく。

「しかし、さすがに疲れたね、今日は」と玲伊さんは大きなあくびを一つした。

「一日中、店中を駆けまわっていたんだもんね。お疲れ様……あれ、玲伊さん?」

 横を向くと、彼は腕を胸の前で組み、目をつむっていた。

 睡魔には勝てなかったようでそのうち、スース―と寝息が聞こえてきた。

 あ、わたしによりかかったまま、寝ちゃった。

 本当に疲れていたんだ。
 起こしてはかわいそうだと思ったわたしは、しばらく、そのままの姿勢で彼の寝息に耳を澄ましていた。

 他にはなにも聞こえない。
 おごそかなほど静謐な夜更け。

 世界にいるのはわたしたち二人だけのように錯覚してしまいそうになる。

 そして、そのことがこの上なく幸せで……

「う……ん」
 彼が身じろぎしたのを合図に、わたしは、そっと彼の唇に自分の唇を重ねた。
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