もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
エピローグ
【8年後】
「優お姉さん、あ、違った。香坂店長。今日からよろしくお願いします」
そう言って頭を下げたのは、小学生の頃、いつも高木書店に通ってくれていた鳴海ちゃん。
あのとき、小学5年生だった彼女も、今では大学1年生。保育士を目指して勉強しているそうだ。
そして今日から、うちの本屋でアルバイトすることになっていた。
と言っても、ここはかつての高木書店ではない。
再開発事業は滞りなく進み、当初の予定通り、3年前の5月に着工し、来月早々に、新しい商業施設が完成する運びとなっていた。
そして、やはり商業施設に大型書店が入ることになり、高木書店は80年余りの歴史の幕を閉じることとなった。
結局、祖母は権利を争うことをやめ、閉店する道を選んだ。
解体工事前日。
祖母とわたし、それに玲伊さんと兄の4人で集まり、店の前で記念撮影をして別れを惜しんだ。
「明るく別れを告げる。意地でも涙なんか流さない」と言っていた祖母の目も潤んでゆく。
でもすぐ「鬼の目にも涙だな」と言った兄の尻を思いきりひっぱたいていたのはいかにも祖母らしかったけれど。