もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 
 成長した今でも、鳴海ちゃんはこまやかな気配りのできる優しい心の持ち主。
 8年前、小さい子たちの世話をしてくれていたときから、まったく変わっていない。気心が知れた彼女にバイトに来てもらえることになって、本当に良かったと思っている。

 託児のための保育士は3名雇っていたけれど、書店は今まで、わたしひとりで切り盛りしていた。
 けれど、そうも言っていられなくなってきた。赤ちゃんができたからだ。

 お腹に命が宿ってそろそろ7カ月。
 結婚8年目にして、ようやく授かった待望の第一子だった。

 「優お姉さん、お腹に触ってもいい?」
 鳴海ちゃんがそっと手を伸ばす。
 「いいよ。あ、また蹴ってる。鳴海ちゃんにご挨拶してるのかな」
 「こんにちは。早く生まれてきてね。お姉ちゃんが、絵本をたくさん読んであげるからね。あなたのママがしてくれたみたいに」

 そう言って、鳴海ちゃんはわたしににこやかに微笑みかけた。

 「わたし、優お姉さんに絵本を読んでもらうのが本当に大好きだったの。自分もお姉さんみたいになりたいと思って、保育士を目指すことに決めたんだ」
 「鳴海ちゃん……」

 思いがけない言葉だった。
 あの頃、もがき苦しんでいたわたしを救ってくれたのは、彼女たちの方だったのに。

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