もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「鳴海ちゃん、ありがとう」
「えへへ、ちょっと照れちゃうね。あらたまってこんなこと言うと」
「ううん。嬉しいよ。本当に」

 そう言って、ふたりで手を取りあっているところに玲伊さんがやってきた。

「優紀。大丈夫か。疲れてないか?」
 彼は妊娠が分かってからは1日も欠かさず、予約の合間を縫って何度も顔を出してくれていた。

 嬉しいけれど、ちょっと心配にもなる。

「もう、オーナーがそんなにしょっちゅう事務所を抜けてきたら、他の社員に示しがつかないんじゃない?」

 玲伊さんは澄ました顔で答える。

「その心配は無用。かえって『奥さんの様子、見てきたらどうです?』と勧められるぐらい。俺がイライラしているほうが、みんな気が散るんだって」

 もう、本当に玲伊さんは。

「あっ」
「どうした?」
「また、動いた。お腹蹴ってる」
「俺が来たのに気付いたのかな」
 にこにこ顔でわたしの大きなお腹を撫でている。

 玲伊さん、子煩悩を超えて、とてつもない親バカになりそうだと、わたしはひそかに確信していた。

 
< 276 / 277 >

この作品をシェア

pagetop