もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「ただいま」
「おかえり、ご苦労さん」

 レジ前に座っていた祖母が、さて、と言いながら立ち上がる。

「ごめん。教頭先生と話しこんじゃって。お医者さんに間に合う?」
「ああ、まだ大丈夫だよ」

 わたしと一緒にこの店を切り盛りしている祖母は現在75歳。

 いわゆる団塊の世代の生まれで、デビュー当時からの熱狂的なローリングストーンズ・ファンである。

 気持ちが若いというだけでなく、見た目もとても若々しい。
 グレイヘアをなびかせて街を闊歩するスナップが、シニア女性向けの雑誌に載ったほど。

 この、いつまでも友達みたいな祖母が、わたしは大好きだった。


 今から4年前の12月。
 会社から家に戻ると、祖父が倒れたという知らせが届いていた。
 家族で病院に駆けつけたけれど、手厚い治療の甲斐もなく、祖父は帰らぬ人となった。

 心臓発作だった。

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