もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「準備するから、ちょっと待っていて」

 彼はカラカラと音をさせて、アンティーク調のワゴンを引いてきた。

 ケープの色は黒。
 え、これ、シルクだ。肌ざわりがとってもいい。
 
 彼はわたしの髪からゴムをはずし、とかしはじめた。

「やっぱり枝毛だらけだな。前から気になってたんだよ。ちゃんと手入れしてないだろう」

「え、でもトリートメントは使ってますけど」

「ただシャンプーのあとにつけて流してるだけだろ。それじゃ、ほぼ効果ないから」
「はあ」


「本当はスペシャルトリートメントをしてやりたいところだけど、それはまた今度。俺も15時半から予約が入ってるし、優ちゃんも用事があるんだろう?」

「はい。毎週水曜日と土曜日には、店に近所の小学生が集まってくるんです」
「小学生が?」
「すぐ近くに都営団地がありますよね」
「ああ、昔、あそこでよく遊んだな」

「毎回3~4人、遊びに来ます。読み聞かせをしたり、宿題を見てたりして過ごしているだけですけれど」
「へえ、そっか。じゃあ、今は簡単なセットとメイクだけにしておくよ」

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