もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 読み終わると、鳴海ちゃんと愛美ちゃんはうっとりと顔を紅潮させた。
 悟くんひとり、退屈そうにたたみでごろごろしていた。

 玲伊さんと出会ったころ、この絵本はわたしの一番のお気に入りだった。

 なぜなら、玲伊さんが読んでくれた本だったから。

 毎晩、かならず読んでから眠った。
 彼の声を思い出しながら。
 
 そして、いつも願っていた。
 しろいうさぎみたいに、玲伊さんのお嫁さんになって、ずっとずっと一緒にいられたら、と。

 でも兄や玲伊さんが中学生になって、三人で遊ばなくなってからは、この本を押し入れの一番奥の箱にしまい込んだ。

 〈くろいうさぎ〉の悲しい顔が、自分の切なさと重なって、読むのがつらくなってしまったから。
 
 5時過ぎに、愛美ちゃんや悟くんはお迎えが来て帰っていった。
 わたしは店の仕事に戻り、一人になった鳴海ちゃんは、畳の間で宿題をしていた。
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