もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 しばらくすると、外から、6時を知らせる音楽が聞こえてきた。

 「お母さん、遅いね」
 わたしが畳の間に顔を出すと、鳴海ちゃんは「優お姉さん、ちょっと来て」と声をかけてきた。

 「この問題、わかる?」
 「うーん、5年の算数、難しいからな。できるかな」
 割合を求める文章題をふたりで考えているとき、からからと引き戸が開く音がした。

 「あ、お母さん、来たみたいだよ」
 「じゃあ、片づける」

 鳴海ちゃんがノートや筆箱をランドセルにしまいはじめたとき、居間と店の間にかかっている暖簾がめくられた。

 顔をのぞかせたのは、鳴海ちゃんのお母さんではなく、玲伊さんだった。

 「読み聞かせ、もう終わっちゃった?」
 「えっ? あれ、玲伊さん。なんで?」
 「モデルの件、藍子さんに話に来たんだよ。優ちゃんの読み聞かせも、と思ったんだけど」

 急に顔を出されると、心の準備が出来ていなくて、ついドキッとしてしまう。
 
 そんなわたしを見て、鳴海ちゃんは不思議そうに言った。

 「わ、優お姉さん、どうしたの? 顔真っ赤だよ」

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