もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 「あのさ……」

 その声に、みんなの視線が集まった。
 一瞬怯んだけれど、いつになく大きな声で言うことができた。

「わたしがおばあちゃんとこの店を続けるよ」と。

 その言葉に、母は驚いて目を見張った。

「あなたは仕事があるでしょう。あんなに苦労して入った会社なのに」
「仕事は……やめる」
「やめるって」母はあきれた顔をした。
「優紀、そんな簡単に言わないで」
「でも、わたし、おじいちゃんの本屋を潰したくないから」

「だからって、お前が会社やめることはないだろう」と兄も口をはさんできた。

 母と兄二人に頭ごなしに否定され、カチンときたわたしは喰ってかかった。

「じゃあ、お兄ちゃんはあの店がなくなってもいいの!」

 子供のころの、大切な思い出がたくさんつまった店なのに。

 わたしとお兄ちゃんと、そして玲伊さんの。

「優紀、でもな……簡単に継ぐっていうけど」

 まだ、わたしを説得しようとする兄を伯父が制した。

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