もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 そのころから手先が器用だった俺は、その後も一階の店舗からヘアアレンジの本を持ってきて、複雑な編み込みもマスターした。

「可愛いな」
 俺がほめてやると「うん、この髪、可愛いから好き」と本当にうれしそうに顔をほころばせた。

 頬がピンクに染まって、少し恥ずかしそうに微笑む優紀の顔は今でも覚えている。

 ああ、なんて可愛いらしい顔するんだろう。

 髪を結んだことで、優紀からそんな表情を引き出せたのが、なんだかとっても誇らしかった。

 そして、そんな彼女を抱きしめたくて仕方がなかった。
 そんなことをしたら、驚いて泣き出すかもしれないと思って、必死に気持ちを抑えたけれど。


 クラスの女子には感じたことのない、生まれてはじめての衝動で、自分のことながら、ものすごくとまどった。

 今にして思えば、あれは俺の初恋だったんだろう。

 とはいえ、当時は小学6年と小学2年。
 もちろんそれ以上の進展はなく、中学から私立の男子校に通うことになり、浩太郎と遊ぶ機会はめっきり減り、必然的に優紀と会うこともなくなった。

 
< 62 / 277 >

この作品をシェア

pagetop