もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
数少ない短大卒の女子同期のひとりに、親会社の重役令嬢がいた。
桜庭乃愛という、まるでアイドルのような名前を持つ彼女は、言ってみれば同期内の女王的存在。きつい性格だと評判の人物だった。
父親の威光はこの子会社まで及んでいて、上司でさえ、入社したばかりの彼女のご機嫌をうかがっているようなところがあった。
彼女のようなタイプが苦手だったわたしは、極力関わりを持たないように気をつけていた。
まあ桜庭さんの方も、取り立てて特徴のないわたしは眼中になかったらしく、初めのうちは特に問題なく、日々を過ごしていた。
けれど、研修が終わり、彼女と同じ課に配属されて半年をだいぶ過ぎた頃、状況は一変した。
課内で手がけていた大きなプロジェクトがひと段落し、心機一転と、営業とアシスタントの組み換えが行われた。
わたしが担当することになった田辺さんの前任者が、その、桜庭さんだった。
「いやあ、担当が加藤さんに変わって、本当に良かったよ」
田辺さんは、桜庭さんがいないときを見計らって、わたしにそう耳打ちした。
「乃愛ちゃん、電話対応でクライアント怒らせるし、書類不備も多いし、本当、大変でさぁ」
「……そうですか」
一言、そう答えただけで、わたしは決して彼に同調して、桜庭さんを揶揄したりはしなかった。
桜庭乃愛という、まるでアイドルのような名前を持つ彼女は、言ってみれば同期内の女王的存在。きつい性格だと評判の人物だった。
父親の威光はこの子会社まで及んでいて、上司でさえ、入社したばかりの彼女のご機嫌をうかがっているようなところがあった。
彼女のようなタイプが苦手だったわたしは、極力関わりを持たないように気をつけていた。
まあ桜庭さんの方も、取り立てて特徴のないわたしは眼中になかったらしく、初めのうちは特に問題なく、日々を過ごしていた。
けれど、研修が終わり、彼女と同じ課に配属されて半年をだいぶ過ぎた頃、状況は一変した。
課内で手がけていた大きなプロジェクトがひと段落し、心機一転と、営業とアシスタントの組み換えが行われた。
わたしが担当することになった田辺さんの前任者が、その、桜庭さんだった。
「いやあ、担当が加藤さんに変わって、本当に良かったよ」
田辺さんは、桜庭さんがいないときを見計らって、わたしにそう耳打ちした。
「乃愛ちゃん、電話対応でクライアント怒らせるし、書類不備も多いし、本当、大変でさぁ」
「……そうですか」
一言、そう答えただけで、わたしは決して彼に同調して、桜庭さんを揶揄したりはしなかった。