もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
でも、飲み会でその話を聞いた誰かが、面白がって大げさに話を盛ったらしい。
数日後、会社に行くと、なぜかわたしが「桜庭さん、仕事ができなくて田辺さんが困ったらしいよ」と言いふらしていたという噂が広まっていた。
誤解はすぐ解けたけれど、それ以来、わたしは完全に桜庭さんにマークされてしまった。
もともと内気な人見知りで、職場の人たちと表面的な付き合いしかしてこなかったことが、仇となった。
そのため親身になってくれるような味方もなく、会社に行くのがとてもつらくなった。
一方、桜庭さんには男女ともに取り巻きが多く、仲間内のSNSでわたしの態度や服装、そしてミスしたことなんかをあげつらって、笑い者にしていたらしい。
その中のひとりが、善意からそのことをわたしにこっそり教えてくれたのだけれど、逆に知らない方が良かった。
それを知ってからは、会社にいる間中、自分が人からどう思われているのか、そればかりが気になるようになってしまった。
今考えれば、あの忠告は善意からではなく悪意からだったのかもしれない。